江戸川乱歩の生誕地として知る人ぞ知る存在だった三重県名張市が、一躍、その存在価値を全国の乱歩ファンにアピールしたのが、1997年に始まる名張市立図書館の乱歩リファレンスブックシリーズ全三冊の刊行でした。
当時、同館の嘱託を務めていた中相作氏が超人的ともいえる力業で完成させた「文献データブック」「執筆年譜」「著書目録」は、乱歩の遺族である平井家の協力も得て、徹底的な文献調査と、綿密な分析、周到な本文執筆及び紙面設計により、うるさ型の多い乱歩マニアをも唸らせ、その後の乱歩研究に欠かせぬ基本文献とされてきたのはご承知の通りです。
名張市立図書館からの刊行はこの三冊をもって打ち止めとなりましたが、実はその後も中氏はシリーズの完結篇として、「江戸川乱歩年譜集成」に取り組んできました。
乱歩の伝記本といえば本人の筆になる回想録「探偵小説四十年」(1961)が、質量ともに他を圧する絶対的な存在として長らく屹立していました。自己に関する記録資料のコレクターだった乱歩がその膨大なスクラップブック「貼雑年譜」をもとに、昭和24年(1949)から12年にわたって書き継ぎ、原稿用紙にして2500枚にも及ぶこの大著は、自身の序言にもある通り「自慢も卑下も真正直」に告白した詳細かつ率直な記述により、乱歩の個人史としてのみならず、この国の創作探偵小説史の「定本」ともされてきました。
ただその刊行から半世紀以上の時を経て、さすがに近年はこの絶対的な「定本」にもさまざまな角度から批判的検討が加えられています。その記述について事実の誤認や記憶の錯誤を指摘する声ばかりでなく、この大著の、読者を圧倒する溢れんばかりの記録群の陰には「ここに記してあるより深く他人が立ち入り、穿鑿するのを拒否して自身の内面の秘密を保持しようとする乱歩の意図があったのでは」などという、隠された執筆意図についてのあらぬ(?)憶測まで飛び出していました。
そんな「探偵小説四十年」への論議を踏まえたうえで、中相作氏がリファレンスブックシリーズ完結篇として今回、満を持して送り出す藍峯舎版「江戸川乱歩年譜集成」は、まったく新たなアプローチによって構成された「乱歩伝」です。
三部構成の内容は下記の目次の通りですが、まずご注目いただきたいのが第三部のフラグメントです。これは「探偵小説四十年」の本文、引用文を除き、それ以外の乱歩が残した夥しい数の回想記、自作解説、身辺雑記のほか書簡、草稿、対談、座談会、果ては広告文などから自伝的要素のある長短さまざまなフラグメント(断片)509点を抜き出し、年代順に配列して再構成する、という気の遠くなるような作業を経て生み出された新たな「乱歩自伝」であり、かみしもを脱いだ「探偵小説四十年」の別ヴァージョンと称すべきかもしれません。
この第三部だけで400頁近いボリュームがありますが、乱歩の肉声を聞くような思いで通読すると、「探偵小説四十年」では覗けなかった、あるいは乱歩自身が本当は隠しておきたかったのかもしれない意外な実像が浮かび上がってくる、乱歩マニア必読の文献です。
また、当然ながら第二部の「年譜」もただの年譜ではありません。乱歩の作家としてのルーツであるエドガー・アラン・ポーの生誕に始まり、昭和40年(1965)8月1日の青山葬儀所における乱歩の推理作家協会葬で幕を閉じるこの年譜は約180頁にも及ぶ長大なもの。乱歩の七十年の生涯に深くかかわった夫人や子息をはじめ、横溝正史、小酒井不木、森下雨村、谷崎潤一郎、萩原朔太郎、松本清張などの作家や編集者から少年時代の友人まで、多彩な関係者による貴重な証言が選り抜かれて随所に配置され、乱歩の「内面の秘密」に迫った「読み物」としての年表になっています。
乱歩研究の第一人者が、リファレンスシリーズ前3巻の達成をもとに、膨大な時間を注いで取り組んだ完結編「江戸川乱歩年譜集成」の成果を、どうぞこの藍峯舎版でご堪能ください。
- <内容目次>
- Ⅰ 伝 Biography
私の履歴書(1956年執筆)
彼(1936年~37年執筆) - Ⅱ 譜 Chronicle
- Ⅲ 録 Fragment (乱歩の自伝的文章の断片509点から構成)
- 巻末データ集(索引)
限定250部(記番入り)
定価24,000円(税込)
造本仕様
A5判 本文632頁(二色刷) 別丁扉(四色刷)
コーネル装・天銀箔、丸背、貼函、保護筒函
保護筒函上題簽用紙/ 波光(白)一色刷
貼函用紙/ 内・キュリアスメタル 赤(竹尾)
外・ミランダ 黒(竹尾)
文字・銀箔押
表紙/ マーブル紙(伊ナポリ・Flavio工房)
背及び角・アートカンブリックDX316(ダイニック)
文字・銀箔押
見返用紙/ きらびきT100シルバー(竹尾)
本扉用紙/ きらびきT100シルバー(竹尾)四色刷
使用作品
戸田勝久「星の小径」(2007) アクリル 41×41㎝
本文紙/ 淡クリーム琥珀N (日本製紙)二色刷
萩原朔太郎の数少ない小説作品の一つである「猫町」は、昭和10年(1935)夏、美麗な豪華本の出版で知られた第一書房の月刊誌「セルパン」に発表され、同年秋、伝説のプライベートプレス「版画荘」から朔太郎自身の装幀で単行本として刊行されました。前年に出版された詩集「氷島」で、詩壇に賛否両論のセンセーションを巻き起こした後、ひっそり世に送り出されたこの小編は、詩人の余技的な仕事と見なされたのか、当時の文芸ジャーナリズムにおいて、特に大きな喝采を浴びることはなかったようです。しかし、そんななかでいち早くこの「猫町」の魅力に深く感応し、これを称揚したのが江戸川亂步でした。翌年春に雑誌に発表したエッセイで亂步は「猫町」について「ポオ小説(さういふ言葉が許されるならば)の一種」とそのユニークさを認めたうえで、「ごく真似手の少ないポオの面影を、久々に見ることが出来て、甚だ感銘が深かった」と讃えています。
朔太郎と亂步は昭和6年(1931)の初対面で「情意投合」して以来、一緒に浅草公園の廻転木馬に乗ったり、新宿のゲイバーで遊んだり、昭和17年(1942)に朔太郎が亡くなるまで、密やかに深い交友を続けていました。共に孤高の存在で、一般には縁遠いと目されていた詩人と探偵小説家を、かくも親しい関係に導いたものは何だったのか――『乱歩謎解きクロニクル』で本年度の本格ミステリ大賞(評論研究部門)を受賞した中相作氏による本書の解説「猫町の散歩者」は、両者の共感と交歓の深層に迫った必読の力作です。
さて、そんな間柄だった亂步の「猫町」への偏愛は、朔太郎没後も少しも変わる ことがなく、昭和23年(1948)には、「怪談無何有郷」とサブタイトルを付けた随筆「猫町」を執筆しています。後に評論集「幻影城」に収録されたこのエッセイで亂步は、「猫町」の誰も着目しなかった怪談としての魅力を余すことなく語ったうえで、おそらくは朔太郎の発想の源流となった英国の怪談作家アルジャーノン・ブラックウッドの「古き魔術」についても絶妙な語り口で懇切な紹介をして、その後の「猫町」のめざましい再評価へとつながる道筋を示すことになりました。
今回の藍峯舎版「猫町」では、朔太郎の本編と、その名作を「こよなく愛して」きた亂步が朔太郎に捧げた至高のオマージュ「猫町――怪談無何有郷」を、それぞれ初出のテキストによってカップリング。さらに木口木版の世界に新風を吹き込んだ気鋭の版画家林千絵によるカラー挿画17 点と、口絵のオリジナル手彩色木口木版画一葉を添えて、すべての「猫町」愛好家に贈る豪華愛蔵版です。本書でしか覗くことのできない「猫町」の妖美の世界をどうぞご堪能ください。
【愛蔵限定版 猫町】
限定25部(記番入り)
萩原朔太郎「猫町」特装版+林千絵木口木版畫集「猫十七帖」セット
定価180,000円(税込)
3月25日(水)予約開始
<内容紹介>
「猫町」特装版
A5判変型 プラ・ラポルテ製本 二重貼函
上製本とは以下の仕様が異なります。
口絵のオリジナル手彩色木口木版畫を「時計店」(署名・番号入り)に差し替え
天銀から天金に変更
貼函の箔押を銀箔押から金箔押に変更
表紙の箔押を銀箔押から金箔押に変更(背革は本金箔)
林千絵木口木版畫集「猫十七帖」
藍峯舎版「猫町」に収録された挿画及びカットからオリジナル17葉を収録
手彩色12葉+単色5葉(署名・番号入り)
- <収録作品リスト>
- 其の一 帽子猫(「猫町」表題挿畫)
- 其の二 旅(「猫町Ⅰ」改題)
- 其の三 夢の境界
- 其の四 反転する世界
- 其の五 額の裏側
- 其の六 山峡の鐡道
- 其の七 祭りの夜(「猫町Ⅲ」改題)
- 其の八 秋の山道
- 其の九 幻燈の中へⅠ(「猫町」改題)
- 其の十 幻燈の中へⅡ
- 其の十一 玻璃の家
- 其の十二 異変(「猫町Ⅴ」改題)
- 其の十三 窓辺
- 其の十四 マントの紳士
- 其の十五 煙管
- 其の十六 匣の中の星座
- 其の十七 1,2,3
版畫集仕様
タトウ/表紙 セリーネ(コン)
見返し/マーメイド(白)
二つ折り版画挟み/アラベール(アッシュグレー)
セット外函/内・セリーネ(ボルドー)
外・セリーネ(コン)
幅234㎜×高さ290㎜×背幅74㎜
【猫町】
- <内容目次>
- 萩原朔太郎 「猫町」(「セルパン」初出バージョン)
- 江戸川亂步 「猫町――怪談無何有郷」(「小説の泉」初出バージョン)
- 林 千絵 「猫町」挿畫帖(別丁四色刷 挿画17点)
- 解説 中 相作「猫町への散歩者」
- 口絵 林 千絵 オリジナル手彩色木口木版画(署名・番号入り)
限定220部(記番入り)
定価24,000円(税込)
造本仕様
A5判変形 136頁(本文104頁 四色刷挿画32頁)
プラ・ラポルテ製本
面取丸背表紙・天銀箔、二重貼函、保護筒函
保護筒函上題簽用紙/波光(白)一色刷
二重貼函用紙/ 内・ウーペケーネス(プラム)
外・ソフィーナソフト(コン)銀箔押
背継表紙/背・白色染仔牛革
表裏布・ソフィーナソフト(コン)
箔押/銀箔+赤箔
見返用紙/NTほそおりGA(しんく)二色刷
本扉用紙/リ・シマメ(スノーホワイト)二色刷
オリジナル木口木版画/雁皮刷・手彩色
挿画用紙/ヴァンヌーボF-FS(ナチュラル)四色刷
本文紙/アラベール(ナチュラル)二色刷・一色刷
奥付用紙/レイド紙(ナチュラル)
愛蔵限定版
上製本
昭和4年(1929)、改造社の世界大衆文学全集第30巻として刊行された「ポー、ホフマン集」の翻訳者には江戸川亂步の名が掲げられていましたが、亂步自身が後に自伝で明らかにした通り収録作のすべてが代訳でした。そして、巻の過半を占める呼び物であるポー名作集の翻訳を委嘱されたのが、当時26歳だった渡邊溫。「ポーの心酔者」だった溫は、前年まで横溝正史編集長の下で、雑誌「新青年」の編集助手をしており、その横溝の仲介で、溫はいきなりこの大役を担うことになったわけですが、さすがにひとりでは荷が重かったのか、一歳違いの兄で、まだ探偵作家としてデビュー前の啓助に助力を求めました。
こうして渡邊兄弟が心血を注いで完成させたポーの翻訳は、当時のレベルをはるかに超えた見事な出来栄えで「名訳」と称賛され、翻訳名義人である亂步をも脱帽させました。後年、亂步は溫の翻訳について、「ポーの一行一行を味読し、理解している点、私などの遠く及ばぬところであった。(中略)当時、二三の人から名訳の評を耳にしたが、その讃辞は悉く渡邊君に与えられるべきものであった」と、自伝に書き記しています。
しかし、この翻訳の刊行からわずか1年足らずで、溫の運命は暗転します。「新青年」編集部に復職し、谷崎潤一郎への原稿依頼のため出張した関西で、乗っていた自動車が踏切で貨物列車と衝突し27歳の若さで急死。編集の傍ら「可哀相な姉」や「兵隊の死」など短編の名品を発表し、作家として確かな地位を築きつつあった溫の前途は突然、断ち切られ、その多彩な才能があらためて衆目を集め再評価されるのは、40年後の昭和45年(1970)、薔薇十字社による作品集「アンドロギュノスの裔」の刊行まで待たねばなりませんでした。その後、近年は文庫版の全集が刊行されるなど、渡邊溫の遅ればせながらの復権はなされましたが、ただ、その短い生涯における決定的な仕事のひとつだったポーの翻訳については、亂步名義で発表された経緯によるものか、全集にも収録されず、ともすれば見過ごされてきた感は否めません。
今回の藍峯舎版「ポー奇譚集」は、溫が遺した大いなる遺産であるポーの翻訳にスポットを当て、改造社の世界大衆文学全集に収録された作品集から6篇を精選し、訳者として渡邊溫及びその協力者だった兄啓助の名義で刊行いたします。文字遣いまで気を配った翻訳の妙を味読いただけるよう、発表時のままの旧字旧かな表記とし、さらに各篇には銅版画家坂東壯一による描き下ろしの挿画が添えられた豪華愛蔵版です。どうぞご期待ください。
- <収録作品>
- 黄金蟲
- メエルストロウム
- 陥穽と振子
- 赤き死の假面
- アッシャア館の崩壊
- ウィリアム・ウィルスン
- 解説 昭和四年のエドガー・ポー 中 相作
【「ポー奇譚集」特装版(愛蔵版)】
限定30部(記番入り)
坂東壯一オリジナル銅版画7葉綴込
定価150,000円(税込)
造本仕様
A5判変型、総革面取突付け丸背表紙・天金箔、二重貼函、保護筒函
保護筒函上題簽用紙/波光(白)一色刷
二重貼函用紙/内・ウーペケーネス(プラム)
外・アサヒモスバートン(№972) 金箔押
総革表紙/黒色染羊革 箔押/本金箔+赤箔
見返用紙/Magカラー(ボルドー)一色刷
本扉用紙/新フェルトン(クリーム)二色刷
銅版画用紙/ハーネミューレ(アイボリー)
本文紙/アラベール(ナチュラル)二色刷
奥付用紙/レイド紙(ナチュラル)
【「ポー奇譚集」】
A5判変形 本文二色刷216頁 別丁二色刷挿画(銅版画)7点
限定200部(記番入り)
定価18,000円(税込)
造本仕様
背継面取表紙・天金箔、丸背、二重貼函、保護筒函
保護筒函上題簽用紙/波光(白)一色刷
二重貼函用紙/内・Magカラー(ボルドー)
外・五感紙(荒目・黒)
背継表紙/背・黒色染牛革
表裏布・ワールドクロス・タンタンピース650-BK
文字・本金箔押
見返用紙/Magカラー(ボルドー)
本扉用紙/ニューこもん(白)二色刷
挿画用紙/ヴァンヌーボF-FS(ナチュラル)二色刷
本文紙/アラベール(ナチュラル)二色刷
奥付用紙/レイド紙(ナチュラル)
愛蔵版
上製本
江戸川亂步が1年2カ月にもわたる第一回目の休筆の後、再起を期して昭和3年(1928)夏、雑誌「新青年」に3回に分けて連載したのが中編小説「陰獣」です。亂步自身をモデルにした怪作家大江春泥が謎の核心として暗躍する奇抜な趣向が評判となり、最終回を載せた号が、雑誌としては異例の増刷を繰り返すほどのセンセイションを巻き起こしました。こうして「陰獣」は、亂步を作家として新たなステージに飛躍させるエポックメーキングな作品となりましたが、さらに加えて、この連載の挿画を担当した21歳の駆け出しの挿絵画家竹中英太郎を一躍、挿絵界の寵児に押し上げる決定的な作品ともなりました。
中井英夫が「乱歩世界の完璧な画像化」と讃えた英太郎の「陰獣」挿画は、登場人物すべてが「幽暗の霧の彼方にうごめく異形の者」(中井)のように妖しく朧げに描かれた斬新なもので、その後も英太郎は「孤島の鬼」「押絵と旅する男」「悪夢(芋虫)」「盲獣」など亂步の評判作の挿画を、一手に担い続けました。が、昭和10年(1935)、押しも押されもせぬ人気挿絵画家となっていた英太郎は、胸中に抱いてきた志と相容れぬ安逸な生活への煩悶から絵筆を折り、翌年には満洲へ渡ってしまいます。そしてその英太郎が、自らの画業の総決算として、平凡社の「名作挿画全集」のために最後に描き下ろしたのが、出世作だった「陰獣」への新たな画風による挿画7点と、作中に登場する大江春泥(=亂歩)の小説作品18点の挿画を一覧にした入魂の画集「大江春泥作品画譜」でした。
藍峯舎版『完本 陰獣』は、亂步にとっても運命的な作品となった名作に、「大江春泥作品画譜」をはじめ、英太郎が画業の最期まで新たなアプローチを続けた「陰獣」にまつわる挿画全点を初めて集大成いたしました。
没後30年を迎え、あらためて再評価のスポットが当てられる竹中英太郎と亂步の究極のコラボレーションを藍峯舎版でどうぞご堪能ください。
- <内容目次>
- 陰獣(「新青年」初出バージョン) 江戸川亂步 挿画 竹中英太郎
- 「陰獣」 竹中英太郎画貼
「陰獣」挿画(平凡社「名作挿画全集」バージョン)
大江春泥作品画譜
「陰獣」因縁話(回顧エッセイ) - 解説 江戸川乱歩の不思議な犯罪 中 相作
限定220部(記番入り)
定価18,000円(税込)
造本仕様
A5判変形 192頁(本文176頁、二色刷挿画16頁)
背継面取表紙・天金箔、丸背、貼函
貼函用紙/五感紙 荒目(黒)二色刷・金箔押
背継表紙/背・赤色染牛革
表裏布・ワールドクロス モヘアクロス(No.341-BLACK)
文字・本金箔押
見返用紙/シープスキン(古色)一色刷
本扉用紙/フェルトン(クリーム)二色刷
口繪用紙/ヴァンヌーボF-FS(ナチュラル)二色刷
別丁挿画用紙/ヴァンヌーボF-FS(ナチュラル)二色刷
本文用紙/アラベール(ナチュラル)
奥付用紙/レイド紙(ナチュラル)
江戸川亂步が世に送り出した最初の「著書」といえるのは、早稲田大学在学中の満21歳だった大正5年(1916)、自らペンを握って少年時代から偏愛してきた作家とその作品について積年の想いを洋罫紙に綴り、表紙の図案から目次のレイアウト、カットの絵まで手掛けた全240頁の手製本「奇譚」です。ポーを始祖とする探偵小説への熱い思いが吐露されたこの本を、亂步は作家としてデビューする以前の雌伏時代、弟たちと経営していた古書店の店頭に商品として並べたこともありましたが、残念ながら買い手はつきませんでした。そんな「奇譚」を、亂步は専業作家となった後も手元に大事に保存して、いつか出版の機会が到来するのを待っていたようです。
しかし亂步の生前、ついに「奇譚」は陽の目を見ることがなく、昭和63年(1988)の講談社の文庫版全集において、ようやくその写真版による複写が公開されました。とはいえ、この文庫版全集は判型が小さいことに加え、当時の印刷技術では写真も鮮明とは言い難く、おまけに文章が片仮名表記だったため、一般の読者にとってその内容を読み取るのは、はなはだ困難な状態でした。
そんななかで、この亂步研究の原典ともいうべき「奇譚」の解読にあえて挑んだのが亂歩研究家中相作氏です。亂步についての画期的なリファレンスブック三部作の編集で知られる中氏が長い年月を費やしたその成果の一部は、2014年暮に刊行された氏の個人誌「伊賀一筆」で公開されましたが、今回の藍峯舎版はその後、中氏が完成させた「奇譚」全ページの翻刻を集大成し、原文の片仮名表記を読み易い平仮名に変換したうえで初めて単行本化いたしました。さらに立教大学が保存する原本の全ページを、今回の出版にあたり最新技術でデジタル化した高精細画像に、原文のままの片仮名表記による翻刻文を添えて完全収録したCD-ROM付の決定版です。
制作から100年の時を経て、ついに明らかとなる亂步の全著書中随一の「稀書」の全貌を、どうぞこの藍峯舎版でお楽しみください。
限定250部(記番入り) CD-ROM付
定価22,000円(税込)
造本仕様
A5判 本文168頁
布表紙、面取題簽貼り・三方銀・角背
貼函、CD二ツ折ケース、保護筒函
保護筒函上題簽用紙/風光 一色刷
貼函用紙/五感紙(荒目 黒)・金箔押
CDケース/布・ワールドカンパス(SNシャンタン)・金箔押
表紙/布・ワールドカンパス(SNシャンタン)・金箔押
題簽用紙/TS-8(N-7)四色刷・金箔押
見返用紙/五感紙(荒目 黒)一色刷
本扉用紙/五感紙(ナチュラル)二色刷
本文紙/アラベール(ナチュラル)
奥付用紙/レイド紙(ナチュラル)
付属CD-ROMの動作環境(ご注文の前にご確認ください)
・Windows Vista、Windows7、Windows8.1、Windows10、Mac OS Ⅹ 10.8以上で確認。
・上記以外のOS(LinuxやiOS、Android等)には対応しておりません。
・ご利用にはPCに接続されたCDドライブが必要です。
・ディスクから直接に起動するアプリケーションですので、インストールや追加ソフトは不要です。
・タブレットデバイスやマルチタッチ操作には対応しておりません。
-
『幻想と怪奇』特装本
-
『幻想と怪奇』上製本
江戸川亂步は戦前、2冊の限定本を出版していますが、そのひとつが昭和12年(1937)、版画荘から出された自選短編集『幻想と怪奇』です。版画荘は萩原朔太郎の『猫町』『定本青猫』など美しい版画本や詩画集の出版で知られた伝説のプライベートプレス。戦前の銀座で初めて版画専門の画廊を始めた平井博が主宰するこの出版社から短編集の出版依頼を受けた亂步は喜び、自ら収録する作品を選んだうえでタイトルも『幻想と怪奇』と決め、さらに収録作すべてにきめ細かく手を入れています。なかでも「火星の運河」は、クライマックスシーンに四段落にわたる書き足しをしており、本書でしか読めない最長バージョンとなっています。ただ、そこまで熱を込めた亂步にとっていささか予想外だったと思われるのは、出来上がった本に、版元の社名の由来である版画はおろかカットすら入っていなかったことです。版画荘はこの出版の翌年、資金のショートで活動を停止しているので、その背景には経済的な理由があったのかもしれませんが、もちろん亂步はそれについていっさい不満を述べていません。それでも自作と版画のコラボレーションについての思いは残ったようで、戦後の昭和31年(1956)に東京創元社から出版された限定豪華本『犯罪幻想』では、亂歩自らの希望により挿絵に棟方志功の木版画が使用されています。
というわけで今回の藍峯舎版「幻想と怪奇」は、亂步が選び抜いた自作の短編ひとつに一枚ずつ版画を入れるという、版画荘のオリジナル版では果たせなかった亂歩の夢を実現しています。原本には9篇の短編が収録されていますが、今回はそこから6篇を選び、それぞれに銅版画家坂東壯一の新作が添えられます。「虚無と憂愁」を秘めた幻想的作品で知られる坂東氏が、鍾愛してきた亂步の「幻想と怪奇」の世界に初めて挑んだコラボレーションの見事な結実を、藍峯舎版でご堪能ください。
- <収録作品>
- 押繪と旅する男
- 鏡地獄
- 人間椅子
- 人でなしの恋
- 火星の運河
- 蟲
- 解説 猟奇の果て 遊戯の終わり 中 相作
A5判変形 本文240頁 別丁挿画(銅版画)6点
限定200部(記番入り)のうち
・特装本25部(No.1~No.25) 坂東壯一オリジナル手彩色銅版画6葉<署名、番号入り>綴込
定価120,000円(税込)
・上製本175部(No.26~No.200) 別丁挿画6点は高精細印刷(二色刷)
定価18,000円(税込)
造本仕様
<特装本>
総革面取突付表紙、三方金、丸背、二重貼函、保護筒函
保護筒函上題簽用紙/ 波光(白)一色刷
二重貼函用紙/内・ウーペケーネス(プラム)
外・ロイヤルセーム(No.960.78 )
総革表紙/濃紺染山羊革、文字・本金箔押
見返用紙/シープスキン(古色)二色刷
本扉用紙/新フェルトン(クリーム)二色刷
銅版画用紙/ハーネミューレ(クリーム)
本文紙/アラベール(ナチュラル)
奥付用紙/レイド紙(ナチュラル)
<上製本>
背継面取表紙・天金箔、丸背、二重貼函、保護筒函
保護筒函上題簽用紙/波光(白)一色刷
二重貼函用紙/内・ビオトープGA-FS(ベリーレッド)
外・プライク(ブラック)
背継表紙/背・黒色染牛革
表裏布・アイリッシュリネン(No.200-BLACK)
文字・本金箔押
見返用紙/シープスキン(古色)
本扉用紙/ニューこもん(白)二色刷
挿画用紙/ヴァンヌーボF-FS(ナチュラル)二色刷
本文紙/アラベール(ナチュラル)
奥付用紙/レイド紙(ナチュラル)
特装本
上製本
横溝正史の「鬼火」は雑誌「新青年」の昭和10年(1935)2月号と3月号に、前後篇に分けて掲載されました。当時、横溝は喀血のため作家生活を中断し、信州の上諏訪に転地して療養中。体調を気遣いつつ「一日に三、四枚」というペースで、横溝は再起を期したこの原稿に心血を注ぎ、鬼気迫る怨念の物語160枚を書き上げました。
ところが2月号に掲載された前篇の「愛欲シーン」が当局の検閲に引っかかり、10頁ほどが削除処分となる不運に見舞われてしまったのです。衝撃を受け落胆した横溝はその後、単行本化にあたってやむなく削除部分を中心に書き直すこととなり、この改訂版の「鬼火」が以来、長らく流布してきました。ところが昭和44年(1969)、桃源社から「鬼火」が再刊される際、たまたま削除を免れた「新青年」の当該号を所持していた作家の中井英夫からの資料提供により、改訂版の末尾に問題となった削除部分が付記される形で、初めて一般の読者の目に触れることになりました。
さらにその後の刊本では、改訂版の本文に編者が削除部分をはめ込んだ折衷版が登場して主流となっていますが、今回の藍峯舎版の「鬼火」は、本来この形で読者の目に触れることを作者が企図していたにもかかわらず、検閲禍で幻とされてしまった「新青年」掲載のテキストの初の単行本化です。表記も発表時のままの旧字旧かなといたしました。
また「新青年」で本文に添えられた竹中英太郎の最高傑作といわれる挿画全点を、従来の刊本とは異なり、現存する原画から完全復刻いたしました。さらに「鬼火」前篇掲載号の「新青年」に同時に発表され、中井英夫から「探偵小説の真の魅力をのこらず説いた、色暗い宝石のような輝きを持つ」と評された横溝の探偵随筆の名品「槿槿先生夢物語」も併せて収録いたしました。数多い横溝作品の中でも最も数奇なドラマを背景に秘めたこの名作を、竹中英太郎の妖艶な挿画とともにどうぞお楽しみください。
- <内容目次>
- 鬼火 オリジナル完全版 挿画 竹中英太郎
- 探偵随筆 槿槿先生夢物語
- 解説 「鬼火」因縁話 中 相作
250部限定(記番入り) 定価15,000円(税込)
造本仕様
A5判変型 本文152頁 別丁二色刷 挿画8点
背継面取表紙・金箔天金 丸背 貼函
貼函用紙/ビオトープGA-FS(ベリーレッド) 箔押
背継表紙/背・黒色染牛革
表裏布・ワールドクロス特製コート紬(濃赤)
文字・本金箔押
見返用紙/ビオトープGA-FS(ボルトブラック)一色刷
本扉用紙/ヴァンヌーボF-FS(ナチュラル)表裏二色刷
挿画用紙/ヴァンヌーボF-FS(ナチュラル)表裏二色刷
本文紙/アラベール(ナチュラル)一色刷
奥付用紙/レイド紙(ナチュラル)一色刷、藍峯舎朱印押
江戸川亂步の数ある長篇小説の中でも、昭和9年(1934)、新潮社の大衆雑誌「日の出」に連載された「黒蜥蜴」は、妖艶な「女賊」を主人公に据えた亂步の「唯一の女賊物」です。社交界の花形にして暗黒街の女王でもある女賊「黒蜥蜴」と名探偵明智小五郎が、日本一のダイヤ「エヂプトの星」をめぐってくりひろげるこの「おそろしくトリッキーでアクロバティックな冒険物語」(亂步)に花を添えているのが、宿敵同士である女賊と名探偵とのほのかな恋――。他の長篇とは一味違ったこの「ロマンティックな」設定に深く魅了されたのが少年時代の三島由紀夫でした。「少年倶楽部」の二十面相シリーズから、亂步の小説を愛読してきた三島ですが、この「黒蜥蜴」には「強烈な印象を与えられ」(三島)、以来特別な愛着の対象となったようです。そんな思いが三十年近くの時間を経て結実したのが、「江戸川亂步原作に據る」と謳われた三幕の「戯曲 黒蜥蜴」(1961)。亂步の原作の魅力を最大限に生かしつつ、三島美学の粋を極めた華麗な修辞や警句を散りばめて、大胆に三島流に仕立て直したこの戯曲は、「なるほど、こうすれば奇抜な面白い劇になるな」と亂步を唸らせ、翌年の初演以来、今日まで人気演目として絶えることなく上演されているのはご承知の通りです。
今回の藍峯舎版の「完本 黒蜥蜴」は、亂步の原作と、三島が三十年来の想いをこめて亂步に捧げた「戯曲 黒蜥蜴」を初めて一冊にカップリングいたしました。亂步のテキストは新保博久氏の校訂により、初出の「日の出」掲載分から単行本化の際に削除された部分を復元し、さらに連載の切り抜きに亂步の自筆で加えられた書き込みもすべて反映した初の「完全無削除版」です。口絵には春陽堂文庫の亂步シリーズの表紙でお馴染みの版画家多賀新氏が、初めて亂步の作品に即して制作したオリジナル銅版画一葉(署名、番号入り)を添えました。亂步の生誕120年に贈る、亂步と三島の贅沢な「初競演」をどうぞこの藍峯舎版でお楽しみください。
<内容目次>
江戸川亂步「黒蜥蜴」(1934) 初の無削除完全版 本文校訂・解説 新保博久
三島由紀夫「戯曲 黒蜥蜴」(1961) 解説 中 相作「乱歩と三島 女賊への恋」
口絵 多賀 新 オリジナル銅版画「黒蜥蜴」(2014) 署名・番号入り
220部限定(記番入り) 定価19,000円(税込) 5月15日(木)発売
造本仕様
A5判変型 本文396頁
背継面取表紙・金箔天金 丸背 貼函
函上題簽用紙/新局紙(白)二色刷
貼函用紙/五感紙 荒目(黒)
背継表紙/背・黒色染牛革
表裏布・ワールドクロス・バックスキン(濃紫)
文字・本金箔押
見返用紙/シープスキン(古色)一色刷
本扉用紙/ビオトープ(コットンホワイト)二色刷
口絵・版画用紙/特注手漉和紙 銅版画(エッチング/アクアチント)一色刷
本文紙/サンフォーレ(ナチュラル)一色刷
奥付用紙/レイド紙(ナチュラル)一色刷、藍峯舎朱印押
昭和34年(1959)、江戸川亂步の実弟平井通の主宰する「真珠社」から豆本シリーズの第一弾として200部限定で出版された『屋根裏の散步者』は、装幀と挿画を世界的な作家に飛躍する直前の、雌伏時代の池田満寿夫が担当したことで、数ある亂步の著書の中でも一、二を争う稀覯本となっています。
今回の藍峯舎の新装本は、真珠社版を豆本の形で再現したものではありません。豆本のサイズでは亂步の本文がはなはだ読み難いため判型を拡大し、池田満寿夫の挿画と亂步の文章とのマッチングの妙味を存分に楽しんでいただけるようにいたしました。
また池田のオリジナル版画全10点の独得の色使いや質感、ニュアンスを細部まで再現するために、最新技術による高精細印刷(FMスクリーン印刷)を採用し、半世紀以上も前の原画を瑞々しく甦らせております。
亂步の本文についても、原書とは異なり、初出である雑誌「新青年」大正14年(1925)8月増刊号掲載のテキストを使用いたしました。死の床にある父親の療養先の山中の小屋で、締切りに追われながら古畳に腹這いになって原稿用紙に筆を走らせたという亂步の執筆時の熱気と高揚と焦燥がそのまま伝わってくるような、発表時のままの旧字旧かな表記でお届けいたします。流布本では「郷田三郎」となっている主人公の名前がここでは「郷田三良」となっていることにもご注目ください。
その主人公のデカダン青年がまるで憑依でもしたかのような、若き池田満寿夫の鬱屈と憤懣が紡ぎ出す奇怪なイメージの数々が、亂步の名作をひときわ妖しく輝かせたこの奇蹟のコラボレーションの結実を、藍峯舎版でご確認いただければ幸いです。
さらに本書には附録として池田満寿夫による回顧エッセイ「豆本因縁噺」と、亂步研究の第一人者である中相作氏の書下ろし評伝「真珠社主人 平井通」が収録されます。中氏の評伝は、「偉大なる兄」亂步の「陰画」のような運命を辿った平井通の人生に新たな光を当てた画期的な力作です。どうぞご一読ください。
江戸川亂步 著
池田満寿夫 挿畫
350部限定(記番入り)
定価14,000円(税込)
造本仕様
A5判変型 本文176頁(二色刷80頁、一色刷96頁) 別丁四色刷 挿画10点
背継面取表紙・金箔天金 丸背 貼函
函上題簽用紙/新局紙(白)二色刷
貼函用紙/五感紙 荒目(黒)
背継表紙/背・生成り牛革
表裏布・アサヒバックサテン(黒)
文字・本金箔押
見返用紙/シープスキン(古色)一色刷
本扉用紙/OKミューズガリバー エクストラ(ホワイトS)二色刷
口絵用紙/OKミューズガリバー エクストラ(ホワイトS)四色刷
本文紙一/サンフォーレ(ナチュラル)二色刷
本文紙二/アラベール(アッシュグレー)一色刷
奥付用紙/ソフトバルキー スメ入り(アイボリー)一色刷、藍峯舎朱印押
エドガー・アラン・ポーと江戸川亂步の深い縁は、亂步が大学在学中からポーを原書で愛読し、作家デビューに当たってその筆名を借りたことからも周知の通りですが、意外にも亂步がポーの作品を自ら翻訳したのはこの「赤き死の假面」一篇しかありません。
昭和4年(1929)、改造社から出版された『世界大衆文学全集』の『ポー、ホフマン集』では、ポーの作品15篇が江戸川亂步訳として収録されていますが、後に亂步自身が自伝の中で渡辺温による代訳であったことを明らかにしています。
本書に初収録された亂步訳の「赤き死の假面」は、探偵小説雑誌『宝石』(岩谷書店)の昭和24年(1949)11月号に発表されました。この号ではポーの没後100年祭記念として「ポオ怪奇探偵小説傑作選」の特集が組まれ、8篇の短篇を掲載。大半が旧訳の再録だったにもかかわらず、そのトップを飾ったのが亂步訳し下ろしの「赤き死」だったのです。
自らの文学的ルーツであるポーの諸作のなかでもとりわけ亂步の愛着の深い作品とされる「赤き死」だけに、その翻訳は熱のこもったまさに入魂の一作となっています。訳語を選び抜き、視覚的効果まで計算し尽した亂步ならではの文字遣いや周到な訳註もあって、このポーの名作のこれまで誰も覗けなかった異様な深層にまで肉薄しています。
そんな亂步の文字遣いまで凝りに凝った翻訳の妙をご賞味いただくため、本書の収録では発表時のままの「正字正仮名」の表記を採用いたしました。
同時に収録いたしました亂步の「ポー論集成」は、白眉の評論「探偵作家としてのE・A・ポー」をはじめ、これまで評論集や全集の各巻に散り散りに収められていた亂步のポー論全12篇を初めて集大成したものです(表記は新字新仮名)。
口繪にはフランスの象徴主義を代表する画家オディロン・ルドン(1840-1916)がポーの原作に触発されて描いた不気味な傑作「赤き死の假面」(1883)を使用しております。
ポーと亂步の時空を超えた交感をどうぞお楽しみください。
- 「ポー論集成」収録作
- 探偵作家としてのE・A・ポー(初出バージョン)
- ディケンズの先鞭
- ポーとディケンズ
- エドガー・ポーの生と死
- 文学史上のラジウム
- ポオと通俗的興味
- 病める貝
- ポーとオリジナリティー
- ポーの百年忌に
- ポーとドイル
- アモン酒の樽
- わたしの古典
解説 中 相作「ポーと乱歩 奇譚の水脈」